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ギフト株式会社

JOURNAL裏話や本音のところ

100年後まで「残したい」ブランド。

100年愛されるブランドづくりをめざしお客様とブランドを共創するチーム、ギフト。
とはいえ、100年は途方もない。
この変化の激しい時代で100年後など当然予測などできるはずもない。

だからこそ。
大切にしたいと思うのは、今、この瞬間に
100年先も「残したい」と心から思える、哲学ある会社/ブランド。

何かを評論家的に語るのではない。
私たちの感性でずっと続いてほしい、と願うもの。
そんなブランドをつくりあげたご本人に、直接話を聞いてきました。

ロジックではつくれない。
再現しようと思えば、それもまた難しい。
だからこそ、生の声を感じ、触れ、味わう。
そんな情報をお届けしたいと思っています。

せっかく横川さんからお話を聞くのなら、他では聞けない話を余すことなく伝えたい。
そう思って、長編のインタビューになっています。
ぜひ、お時間のあるときにお楽しみください。

株式会社ウェルカム 代表取締役 横川正紀さん

【INTRO】
DEAN & DELUCA、GOOD CHEESE GOOD PIZZA 、GEORGE’S、CIBONE、TODAY’S SPECIAL、HAY、など、食とデザインを軸とした素敵なブランドを数多く展開するウェルカム社。時流を捉える流行りものではなく、自分たちがやるべきこと、自分たちだからやれることに注力する。考え抜かれた一つひとつのブランドの種は、いずれも長く愛され続けるブランドに育っています。そうして培ってきた力を活かし、宮下公園のホテルSequenceや虎ノ門横丁などのプロデュースにも事業は広がりを見せる。ギフトのお客様として、私たちが愛してやまない企業であり、そして経営者である横川さん。そんな横川さんからは、今どんな景色が見えているのか。そしてこれからをどう見据えているのか。会社として、そして人として。10年以上にわたり、そばでともに歩み続けてきたパートナーの視点で色々聞いてみました。

経営理念を通じた会社の成長

池戸:早速ですが今日は経営理念のお話から伺いたいと思っています。お付き合いが始まってからしばらくした2016年。株式会社ウェルカムと株式会社ディーンアンドデルーカ・ジャパンの合併時、理念の言語化をご一緒させていただきました。

横川:何回もやり直しました。ほんとに何回も。結局2016年のギリギリまで変えましたね。そこから生まれた、「感性の共鳴(ミッション)」というのは、やっぱり感慨深いものがあります。ものすごい曖昧な言葉だから、こんなのでいいのかな?とか思いながら、どこまでも、どこまでも掘り下げるところまで掘り下げた。剥いて剥いて剥いて、剥いた先の芯に何が残っているの?みたいなことを一緒にずっとやったじゃないですか。これ以上剥けないかなっていうギリギリまでいったら「感性」ってキーワードだと思ったんですよね。最終的には「感性の共鳴」っていう言葉に行きついて強くなった。

池戸:理念策定をしたことで、体感できた”良かったこと”みたいなものはありますか?

横川:山ほどありますね。2社が一緒になってる今だと、感性の共鳴=ウェルカムだよねってあたりまえになってるけど、一緒になる前は、両社が真逆だったから。白と黒じゃないけど、全然違うタイプの会社。同じ代表がやっていても、こんなにも違うのかっていうぐらい。1+1=2以上にならないみたいな感じだった。それが、1+1が3にも4にも5にもなって、今があるので、恩恵っていう意味では山ほどありますね。何をするにも軸がぶれなくなった。ミッションを軸にしてからは、明らかに失敗とか、明らかにやんなきゃよかったみたいな事業は1個もない。なぜここに居るかとか、なぜやるのかとか、結局突き詰めた1番奥に感性の部分があって、そこから何を共鳴させてるんだろう、みたいなところをチームで考える癖ができた。「”これでいい”より”これがいい”」とか、「大は小を兼ねない」とか、自分たちを象徴する言葉がどんどんどんどん生まれていって、それも感性を軸に話しているからこそ生まれた言葉だったし、それらにみんなが素直に共感できたというか。

池戸:出会った頃から何倍も会社が大きくなってきた今、より軸が必要になってきますよね。

横川:結局、何事もそうだと思うんですけど、やっていることが先に立っちゃうよね。レストランをやるとなれば、とりあえず料理つくって。なんでつくってるのかって考えないで、とりあえず美味しいからって。家具も、「めっちゃカッコイイじゃんこのテーブル」とか。なんで、そもそも素敵な家具がいるんだっけ?素敵な家具の中でも、どうしてこれなんだっけ?みたいなことを、ちゃんと考えなくても、若い時は「なんとなく」で全部走ったし。若いからだけじゃなくて、チームの規模が小さければ、あんまりそういう決め切った言葉がなくても、毎日飲んでいればわかるよね、みたいなことで済んでいたんですよね。

池戸:言わずとも伝わる、みたいな関係の限界ですよね。

横川:僕たちは1人ではできないこと、仲間としかできないこと、仲間がいるからこそできることをしたいんです。社会に良い変化を起こしていく渦となる会社になりたいと思ったから、それぐらいの力を持とうと思うと、数百人とか、時には千を超えるメンバーがそこに関わることになる。すると、やっぱり言語化したビジョンとか、ビジュアル化したビジョンなくして、その意志とか意義みたいなものを感覚だけで共有することは難しいと思うんだよね。「感性」って感覚なんだけど、感覚を生かすからこそのシステムとして、ちゃんとそこに1本の軸を必ず持っておくべきだと思うし。それができてから動き方がぶれなくなり、成長してきた先に船団(※)という在り方が見えてきました。
※WELCOMEの組織は、大型船にみんなが載るのではなく、大きさも形も様々な船の船長が集まって同じ方向に進む船団をイメージしている。

池戸:ブランドづくりの根っこにも、「感性」が息づいていますよね。

横川:僕らは、単なる流行りものをやらないっていうポリシーがあるし、そういうことに共感する仲間が多い。「感性の共鳴」というと時々誤解されるんですけど、ウェルカムが言う「感性」はファッション性の感性というよりは、生き方とか暮らし方の感性の話ですね。だから、自然とそれはサスティナブルなものになってくるし、本質的なものに向き合って行くことになる。可変性ばっかりを求めず、ちゃんと残るものに向き合えたり、必然的に独自性が出てくる。それがオリジナリティにつながって、結果的に事業として、それなりに長生きができたり、収益につながったりしているのかな、と思ってます。

強いブランドの作りかた

池戸:ちょうどブランドの話になってきたので、きっとウェルカムさんを見ててみんな気になっているブランドのつくりかたを聞きたいと思ってます。横川さんって、どんなプロセスで、何を頭の中で考えてブランドを生み出しているのか。方程式みたいなものはあるんですか?

横川:多分あるよね。あるけど、あんまり方程式に書いたことはないな。ブランドを生むのって大変なんですよね。僕らも今やってきたブランドでいうと、早くて3年に1回ぐらい。東日本大震災のあとにTODAY’S SPECIALが生まれて、それからGOOD CHEESE GOOD PIZZAが生まれたのが2018年でしょ。生んだわけじゃないけど、その間に始まって今勢いがあるブランドといえばHAYとか。GOOD CHEESE GOOD PIZZA以降は、2022年にTWELVE GARDENS。やっぱりなんだかんだ言って3年とか5年に1回ぐらい。毎シーズン、ポコポコ生んでいるものではないんだよね。「感性の共鳴」っていう言葉のまさに根幹にある在り方なんですけど、「共鳴」なので、独りよがりの良いと思うものをただ世の中にぶつけていくようなアーティスト的な感覚でブランドをつくるのではない。もうちょっと、世の中が本当は求めているんだけど見えてないとか、できないということに対して、ソリューションとしてのブランドをつくっているところがあるから。アートよりかはデザインというか、ビジネスをつくるというか。だからファーストステップは、誰かと共鳴することを、必ず原点に置くようにしています。

池戸:そうやって生まれたブランドの代表例がまさにTODAY’S SPECIALな気がします。

横川:TODAY’S SPECIALは、震災でどうにもならなかった時。当時なんとなく感覚的にいいな、お互いに共鳴できますよね、って話していた野村友里ちゃんとか、長坂常さんとの話がきっかけで。単純なスタイルとしてのナチュラルじゃなくて、考え方そのものがものすごくサスティナブルで、本質的に人間的であるとか、自然的・自然体であることがコンセプトになって生まれたブランド。元々創業のブランドであるGEORGE’Sは天野ジョージさんとの出会いがきっかけだったし、山本宇一さんと出会ってDEAN & DELUCAが始まったり。やっぱりいつも誰かがいて、デザイナーや建築家だったらそのまま一緒に作るっていうプロセスになったり。もちろん、そこにうちのメンバーも一緒にやっていくことで、結果的に自分たちのもの・ブランドになっていくようなかんじですね。

池戸:いつもブランドが始まるときには、社内外関わらず誰かとの共鳴がありますね。

横川:プロセスと言うのであれば、最初は「共感のブレインストーミング」みたいな感じかな。みんなでひとつの団子をつくっていくような。「なんかこんな感じだよね」とか言いながら、キレイに丸くなった時には「これだ!」ってなったら一緒にやろうって。例えばTWELVE GARDENSもこの場所に来て、ここに大人のファミレスみたいなのがあったらいいよねってPlan Do Seeの野田豊加さんと話して共感する、うちのメンバーとも共感する。「そういえば最近色んなところでこんなことがあったらいいなって話を聞くよね」「これだけの人たちが欲しいって言うってことは絶対あったほうがいいよね」「じゃあそれって何?」ってどんどん掘り下げていく。面白い人たちがいて、しゃべっているとアイデアがたくさん出てくるから、テーブルに充分出たら、あとはそれを組み立てながら足したり引いたりして。出来上がってからも、何回も壊したりつくったりしますからね。感覚的ですが、そんな感じじゃないですかね。

池戸:そういったアイディアや視点を生み出す感性のアンテナはどうやって育てるんですか?

横川:それなりに自分の足で色んなものを見て、触れて、食べて、つながって、試してっていうリアルな情報の貯蓄じゃないかなと思いますね。ただ量が多ければいいってものじゃなくて、自分の好きなこと、自分が得意だと思う方向の情報に対して、その質が高い体験をたくさんしているっていうのが大切。そうした経験を下地に、自分の意志があるっていう人と僕らは話す。何か要素が足りないと思ったら、その足りないことを補うことに長けていそうな人と次々つながっていく。何でも解決できる万能な人がいるわけじゃなくて、なんでもできる人は、逆に何にもできないですから。これしかできないけど、ここには圧倒的に長けている!みたいな人たちとのつながりから生まれたアイディアを足し合わせながら、それを具現化していく。形にできるのは僕らのある種のマニュファクチャリングなんだと思っていて、それがうちの強みかなと思います。誰でも出せるようになるにはどうしたらいいですか?って言われると、誰でも出せたら困るけど(笑)。

10年つづかないようなブランドに、価値はない?

池戸:ブランドごとに、関わる関係者の毛色がまったくちがうのもWELCOMEらしさだと感じます。

横川:TODAY’S SPECIALの時は、とにかくDIYというか、大工というか、工作というか。自分の手で何かをすることがテーマでした。それは野村友里ちゃん的には料理だったかもしれないし、長坂常さん的にはまさに大工だったかもしれないけど。誰かがガーデニングしてたり、誰かが料理してたり、誰かが器を作ってたり、誰かが大工をしてたり。この人たちってみんな同じような感覚を持っていて、同じ食卓を囲み始めると、夜が更けてもずっと話してそうな。なんかそういうシーンって想像できるじゃないですか。逆に、この輪の中にDEAN & DELUCAの人は入ってこないんですよね。ここは全然違って、食のスペシャリストとして、「食の美しさってなんだろう?」みたいなことを探求してる感じ。食とアート、食とデザインみたいなことを本気で考えてる人たち。食と並べているものが、ヨーロッパの絵画だったり、オペラだったり、そういう域に行くような。その感覚でいる人たちとDEAN & DELUCAはどうあるべきかみたいな話をしますしね。

池戸:これまで立ち上げて来られたブランドと、DEAN & DELUCAはちょっと感覚が違いますよね。

横川:実は正直、DEAN & DELUCAの時は、もともとニューヨークでブランドが持っていた求める品位や品格みたいなのがちょっと高くて堅いから、最初は苦労しました。TODAY’S SPECIALは、自分たちの中から0→1で生まれてきたので、変な背伸びはないんですよね。健康的な背伸びはあるけど。DEAN & DELUCAはやっぱりすごい人たちがつくったブランドで、既に世界観があったから、そこに自分たちを合わせて背伸びしている時がすごく苦しかった。結果的に自分たちのサイズとか理解を通して自分たちらしくアウトプットできるDEAN & DELUCAに置き直して、やっと健康的な背伸びに戻ったんですよね。それが2008年ぐらい。結果、日本で広がったものは、本国のものと少し違うけど、日本のらしさを持ったブランドに昇華させられた。

池戸:ウェルカムさんのように、考えて、煮詰めて、細部までこだわりつくしたブランドは、流行りに乗ってつくったブランドとはやっぱり仕上がりに差が出てくる気がします。

横川:どっちもあってもいいと思います。うちは自分たちからはやらないし、誘われても本当にやりたいと思わなければ、乗らない。今は情報のインプットもアウトプットできるテクノロジーもツールも簡単でさまざま。若いうちや、はじめは似たようなことをやってみるでも全然いいんだけど、それが当たり前になっていっちゃうようなあり方は、どうだろう。結局オリジナルがなかったらできないわけだから、オリジナルをちゃんと学んで、それを新しい表現としてやるっていうことをちゃんとわからないといけないし、わからないでやっていると続かないと思いますね。

池戸:つくる側の矜持や誇りみたいなものが薄れてしまっているように感じます。

横川:今、写真撮ってプリントアウトするみたいな感じで、本物とは似て非なるものだけど、コミュニケーションで誤魔化せちゃいますよね。でもそれじゃ何も残らないんじゃないかな。テクノロジーにただ呑まれているだけで、それがなくなった瞬間に何もできないよね。移動手段で言えば船から車、車から飛行機って進歩して行く中で、スピードが上がった分、歩く楽しさを忘れちゃってる感じというか。歩く楽しみがわかった上で、速く移動する楽しみもわかるはずなのに、ただ速ければいいみたいになっていくと、何か大きなものを失うんじゃないかって思います。

横川さん本人に起きている感覚の変化。

池戸:もしかしたらあと何年って決めてらっしゃるかわからないんですけど、自分の代のうちにでここまでやっておかなければって考えたりするんですか。

横川:普通に考えたら、クリエイティブの真ん中でやるのはたぶんあと10年もやっちゃいけないかなっていうのがあるので。50歳過ぎた段階でやっぱり思うことは、結局事業やブランドは、どんなに理念を言葉にしても、デザインをマニュアルに落としても、レシピを記録しても、結局明日どうするかを考えているのが人間だし、それをやる時に大事なのは共鳴している感性がある人なわけです。その人、個人とか、そういう感覚があってこだわれる人のパフォーマンスが高くなれば高くなるほど事業は面白くなるし、結果それが売上とか利益になる。そういうパフォーマーの集まりでありたいし、そのパフォーマーのパフォーマンスを上げ続けるプラットフォームになるには、どうしたらいいんだろうなってことを考えるようになりましたね。

池戸:長くお付き合いさせてもらっていて、ここ数年、横川さんから「社会」とか、「世の中」みたいな話が出てくることが多くなった気がします。

横川:社会とか、そもそも働き方とか、生き方とか。そういう大切にしたいことや理念と、眼の前のビジネスがどう共存できるんだ?みたいな。それを踏まえて仕事に集中していくと、これはやらなくていいかも、となることも多いんですよね。それ、僕たちがやらなかったらダメですか?って。僕たちでしかできないことにどれだけ集中できるか。それをどれだけ高いパフォーマンスでやれるか。その仕組みとか、ステージの用意の仕方を、最近また一生懸命考えてるよね。池戸さんと出会った2010年ぐらいの頃は、とにかくバラバラしている状態で、一旦真ん中を見つけたくて会社を1つにして、理念を言語化しました。それからそれなりの規模になりました。それを今度は会社は全員が乗る大船じゃダメだよって言いながら、1艘ずつ全員が船長意識でやる船団的な経営をどうしたらできるかって真剣に考えている。それが僕の最後の仕事かなっていうぐらい。でもそれをある程度の仕組みにするには時間がかかるかな。それでいてちゃんとビジネスとしてパフォーマンスしないといけないから、色々実験繰り返しながらやっていくと、平気で5年10年かかっちゃうんだろうな。なんだかんだでもうすぐ25年になるから、会社も10年区切りで言うともう第3ステージになるので。

池戸:そうなってくると、余計なことやってられないですね。 

横川:でしょう?何かの仕事受けて「3年後とか4年後なんですけど」って言われたら「うーん」ってなる。でもそれは、「うちじゃなきゃダメですか?」ってだけで。世の中に山ほど素晴らしいクリエイターがいるし、アイディアを持っている人もたくさんいるし、自分たちにも限界があるし。だったら僕らはやっぱり強度のあることをやる、結果長く残る力のあるものをつくる。商品であれ、ブランドであれ、企業であれっていう。それは、僕は池戸さんから学びました。

池戸:びっくりしました(笑)。そう言っていただけると、めちゃめちゃ嬉しいです。

横川:そういう企業の在り方とか考え方を、僕の壁打ちとなってすごい付き合ってもらったことで、それが僕は見えるようになったし。「それはなぜですか?」の繰り返しじゃないですか。それで時々しんどいし吐きそうになるけど(笑)。僕らしさみたいなのをちゃんとわかってもらって、時々ちょっと逸れすぎた時は戻してもらいながら、でも僕らの生のクリエイションが産まれるまで付き合ってもらったので。だいたい、いつも気づくのが遅いので、クリエイティブにものすごいしわ寄せがかかるのを頑張って付き合ってもらったり、それが映像だったり、色んな言葉だったり。本当にたくさん色んなものを作ってもらった。それこそコロナの入り口で、あの瞬間にあの笑顔のビデオをつくってもらったりした時も、あれで生き残れましたもんね。
(コロナが始まり、緊急事態宣言が始まる直前の2020年3月。WELCOMEの全メンバーに向けて「笑おう」をテーマにした映像を制作してプレゼントした。)

池戸:2020年3月ですね。今からほんとにコロナ始まるなっていう時に、お店やってるウェルカムさんが1番大変だろうと思って。うちがまだそんなに影響がなかった時期だったので、元気なうちにお客さんに何か恩返しというか、お手伝いができないかと思って。

横川:コロナっていうのが何かよくわからないけど「これはやばい」となって。でもマスクないし、自粛しろと言われるし、営業もままならないっていういまだかつてない苦しい状況。でも、いつかちゃんと笑えるようになるよって。あれを伝えられたのは僕にとってはすごい大きかったし、ほんとに感謝してます。山ほど他にもありますけど。新卒のセレモニーの時も入社式とかもそうだし、年1回のキックオフもそうだし。 いつも全部一緒に考えてもらった感じなので。でも、ギフトさんって会社に頼んでいる感じはあんまりないので。池戸さんと吉田さんに頼んでいる感じだし。僕らも会社というよりかは、個人で受けとりたいと思っているし。ウェルカムと言いながらも、そこにいる誰からしさみたいなものをちゃんとわかってもらって、付き合ってもらえているから、なんだかんだ12~3年経つんですよね。お世話になっております。 

池戸:言わせてるみたいですいません(笑)、ありがとうございます。嬉しいです。逆に横川さんからは、ギフトってどんな会社に見えているんですか?

横川:たとえば広告代理店で言えば、広告が前提になっているクリエイションと、広告が別になくていいクリエイションってあるじゃないですか。クリエイティブエージェンシーなんだけど、全然広告にしない。そういう存在に見えてます。なんかそのほうが大事な気がするんですよ。結果的に広告も使うけど。広告代理店ってもともと広告があったところにクリエイションがあったものが、クリエイションファーストになって、結果的に広告媒体いらないよねっていう結論に至ることがたくさんある。たとえば経営をビジョンファーストで考えていったら、今は広告する時じゃないかもしれないってなるかもしれない。だけど広告前提だと、できないことってたくさんありますよね。なんとなくギフトは、こうなきゃいけないみたいなこととか、自分たちのマネタイズはここ!みたいなのは、あんまり決まってない。その分、経営は多分大変なんだけど。でもそれはそのうちできてくるんだろうなって。今はそこが魅力なんじゃないですかね。あとマルチタスクとフットワーク。それは僕らのせいだと思うけど(笑)。

池戸:僕は20代後半、初めて横川さんと仕事させてもらったとき、自分にはスキルも経験も何もなかったんです。何かどこかで自分の存在価値を発揮しなきゃいけないって思った時に、せめてフットワークで横川さんの周りに居る誰よりも一瞬で打ち返すっていうポジジョンを取ろうと思ってすごい頑張ってたんです。

横川:レスポンスがめっちゃ一瞬だった。それとその一瞬に対して隙間のない、時間のない仕事ばっかりだったよね。夜中の1時から打ち合わせが始まったり、最悪だよね(笑)。たくさん付き合ってもらった。すいません、そういう迷惑は本当にたくさんかけてきたね。だって今なんだもんみたいな感じですよね、いつもね。それ、今でも変わらないかもしれない。 社風っていうより横川スタイルだな(笑)。そうしたいわけじゃありません。でもギリギリまで諦めないでやろうとすると、何故か往々にして時間には追われちゃうところがあるね。本当は時間に追われないようなクリエイションでいかないといけないと思うし。前日になって基礎の根っこから「違いますよね」ってひっくり返すみたいなのは、もうちょっとやめよう(笑)。

池戸:ご紹介いただいた、自遊人の岩佐十良さんもある意味そうで、実際につくってからやっぱり壊すみたいなことを本当にやっちゃえるから、クオリティ高いものが生まれている気もします。

横川:ホントに良くないよね。他の人の話として聞くと本当に良くないですよ(笑)。でも、たくさん壊して作って、壊して作ると強度が出るとか、粘土で言いかえればこねればこねるほど形が馴染んでいく。それは確かに事実なんですよね。それで作らないとわからないから、形にして壊す。それを自分でやる分にはいいけど、誰かに頼んでとなると・・・みたいな。

池戸:やっぱりウェルカムは難しい会社だなって自覚もあるんですか?(笑)

横川:自覚はありますよ、面倒くさい会社だろうなって。いや、最初はなかったですよ。10年ぐらいしてから面倒くさいなーって。「なんでそんなわざわざ面倒なことするの?」って言われることも多くて、ようやくわかるようになりました。確かに周りからすれば「気づくの遅いよ」なんですけどね。そういうのを30歳の時に思えたら、僕の人生は違っていたかもしれないなと思う一方、でも25年間ぐらいこれをやってきたから、その上でここからつくれるものがきっとあると思うので、頑張ろうって。

池戸:面倒くさいっていう表現がネガティブな感じするかもしれないですけど、僕はそれが魅力であり、強さだと思っています。

横川:そうだよね。どんな会社でもそうだと思うんですけど、うちはうちなりの複雑さを持って、やりたいことをやりたい人とやるスタイルを貫いてきた部分もあるので。だから真似できない 。DEAN & DELUCAのトートバッグ1つ取っても、当時既にたくさんエコバッグが世の中に出ていたけど、出てきては消え、出てきては消え。その中で変わらず残れる力みたいな、不思議な体験みたいなのがあるんですよ。表面に見えない中の軸みたいな筋肉みたいなもの。トレーナーに「軸を感じて」とか言われても最初わからないじゃないですか。何回かそのいわゆるインナーマッスルトレーニングやっているとわかってくるみたいに、僕らはずっとそのインナーマッスルを一生懸命に意識してきた。逆にそうじゃない、今流行るやつとか言われると本当に下手。全然できない。それは得意不得意それぞれでいいんだと思います。僕らも色んな人に学んでいるし、真似させてもらっているし、それは全然あっていいと僕は思います。オリジナルをリスペクトしてちゃんと理解を得てやるのが大事です。

池戸:今まで以上に全部自分たちでやらなくてもいいんじゃないかっていう線引きができたことで、スピード感や推進力が上がった感じがしていて、横川さんのラストスパート、何かいい形でご一緒できたらと思います。

横川:ありがとうございます。今やっていることを整えて、エコシステム的な場所に持っていくのに、10年かけない。2027~8年あたりでは、もう少し次の何か新しいことをやるので、それはそれでちゃんとご一緒してください。今もいろいろ学び続けていることを活かして、日本はポテンシャルがあるのにできていないことをやっていきたい。表層的な動きはあるけど、本気で動けているものが少なかったり、あってもまだ点だったりするのを、もうちょっと自分達が関わることでつなげたり拡げたりできそうな気がするなって。でもそれは自分たちが今やっていることを整えて、きちっとクリエイティブとビジネスの両立みたいなものを、もっと強度で高いところでつくっておいてからのほうがいいなとも思ってます。そんな感じで第3ステージ目を走っておりますので、今後とも、お付き合いください。

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理念浸透は、会社と個人を結ぶつよい絆。