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ギフト株式会社

JOURNALお伝えしたいブランドのはなし

個人商店から企業に。転換期のエンジンとなった、理念策定プロジェクト。

GIFT*カケル#4 FTF株式会社 代表取締役 武井進一さま

GIFT*カケル#4は、“MUSIC GO ROUND 音楽は巡る”をコーポレートメッセージに掲げ、アナログレコードを「文化を継承していくツール」と位置づけ、その魅力を世界へ発信し続けているFTF株式会社さま。「Face Records」「Ecostore Records」ブランドを運営し、中古盤中心のアナログレコード販売に加え、廃棄レコードゼロをめざした買取サービスも展開しています。今回は代表取締役である武井さまに、ブランディングにまつわる想いや背景を語っていただきました。

企業理念なしに、今後の成長は描けない。

池戸:F T Fさまから最初のお問い合わせをいただいたのは2021年でした。ブランディングの一環として、企業理念の言語化を検討されていたんですよね。

武井さま:会社の規模が大きくなっていく中で、改めて経営やビジネスの勉強をしていたんです。F T Fは小規模でやっていた時期が長かったので、会社組織というものをもっと理解する必要があると感じていて。調べていくうちに、経営理念やM V V(ミッション・ビジョン・バリュー)の重要さに気づきました。会社の指針があって、それに共感してくれる人が集まらないと、会社として成長しないなと。

池戸:大きな転換期だったんですね。

武井さま:企業理念は、まず自分でもつくってみたんですよ。もともと会社にまつわる印刷物の全て、例えば雑誌の広告や通販カタログなども全部自分でつくっていましたから。企業理念のような数行の言葉なんて簡単だろうと思っていました。ロゴも同じです。フォントにはすごく興味があって、10代の頃からライブやDJイベントのフライヤーをインレタと洋書を白黒コピーして切り抜いて自分でつくっていて。なので初代ロゴは友人に頼みましたけど、2代目以降の歴代ロゴは全部自分でつくっていたんです。

池戸:Face Recordsの歴代ロゴはどれもかっこいいですよね。そんな武井さんでも企業理念の言語化は苦戦されたんですか。

武井さま:ホテルに1週間ほど籠ったこともありました。でも、どうもしっくりこなくて。「仏つくって魂入れず」という諺がありますが、言葉はできても魂が入っていないんです。

池戸:なるほど。

武井さま:いくら考えてもうまい言葉が見つからなくて、やっぱりプロに頼まないとダメだねとなったんです。

池戸:数社にお声がけされたとおっしゃっていましたよね。なぜG I F Tに決めていただいたんでしょうか。

武井さま:池戸さんの提案にあった「この船はどこに向かうのか」という言葉が刺さりました。F T Fは当時、迷走している船のような状態でしたから。

池戸:そうでしたか。

武井さま:僕が1995年に独立してレコード屋を始めたときはアパート住まいで、お金も在庫も潤沢ではなかった。その時の気持ちを思い返すと、井の頭公園にあるような手漕ぎボートで太平洋を進んでいこうとしている、そんなイメージでした。その心象風景と池戸さんの言葉が、ちょうど重なったのかもしれません。

池戸:お話をいただいたとき、美意識は絶対に持ってらっしゃる会社だという感覚がありました。素材が良いので、G I F Tの役割は変な味付けをしないことなんじゃないかと。お刺身みたいな話で、良い素材を生かして良い料理にする。それができればブランディングはうまくいくと感じていました。

採用を変え、売り上げに繋がった「M U S I C  G O  R O U N D」。

池戸:言語化プロジェクトの際はコロナ禍でもあって、リモートにせざるを得ない場面も多かったんです。画面越しでは皆さんの反応が捉えきれなく、提案を気に入っていただけているか不安だったことも(笑)武井さんとしてはこれだなって思う感覚はあったんですか。

武井さま:ありましたよ。特にコ―ポレートメッセージの「MUSIC GO ROUND」は、これだと思いました。

池戸:うれしいですね。「MUSIC GO ROUND」は、僕とコピーライターとで別々に考えていたのにも関わらず、偶然同じフレーズが出てきたんです。F T Fさんにぴったりだなと個人的にもすごく気に入っています。

武井さま:とにかく使う言葉は端的にしたかったんです。例えば最近、80年代の日本人のレゲエが海外で注目されているんです。東京って80年代からレゲエが盛んだったんですよ。でも海外の人にはレゲエが東京にあるはずがないっていう先入観がある。だから海外でもよく知られているTOKYO CITY POPになぞらえて、CITY POP REGGAE というキャッチフレーズをつけたら、どんどん広がっていった。魅力を端的に表現する言葉の重要さを改めて実感しました。

池戸:G I F Tとしては、スタッフや社員さんに受け入れてもらえる言葉かどうかも慎重に選びました。音楽やカルチャー好きな方が多いので、ダサいとか、ついていけないと思って欲しくなかったんです。

武井さま:理念のようなものを決めると、正直、斜に構えたり拒否したりするスタッフも出てくるのかなと思ったんですけど、思いのほか共感してくれる人が多かったですね。今では何かを決めるとき、理念に合っているかどうかが判断基準になっています。

池戸:浸透が早くて、ちょっと驚いています。

武井さま:そうですね。私もびっくりしていますけど、規模が大きくなってルールが整備されていくと息苦しさを感じる人がいる一方で、安定を求めてルールがしっかりした環境を求める人もいて。今、後者を求める人が集まりつつありますね。採用面でも優秀な方がさらに集まってくれるようになっています。僕よりもスタッフみんなの方が優秀で。売り上げも上がっています。

池戸:すごいですよね。武井さん自身が変わったことはありますか。

武井さま:やっぱり、迷った時に理念に戻って考えられるようになりました。理念をつくってよかったのは、本当に音楽が好きでレコードが好きで、想いに賛同してくれる人が集まってきてくれていること。つくっていなかったら現在のようにはなっていなかったでしょうね。

めざすは、業界を牽引する存在。

池戸:F T Fという存在を通して、業界の地位を向上したいという想いもお話しくださっていましたね。

武井さま:昔は採用した方の親御さんがレコード屋で働くことに反対して、辞退されるという悔しい思いをしたこともありました。ひとくくりに「音楽業界で働く人はダメ」と言う人もいましたし。嫌なことってすぐ忘れちゃうんですけどね。どこか下に見られているような風潮は変えたいと、ずっと思っています。

池戸:ブランディングは助けになりますか。

武井さま:なっていると思います。「F T Fだったら安心してレコードを買える」「安心してレコードを売れる」という存在になることが、うちにとってのブランドだと思うので、それはめざしたいですね。

池戸:ブランドって、誰かに対して連想をつくるようなイメージなんですよね。〇〇と言えば、〇〇っていう状態。多くの人に「安心して売買できる・働けるレコード屋」といえば「F T F」という連想をつくることができれば、業界の見られ方が変わることにもつながるのだと思います。

武井さま:そのためには一貫性を崩さないことが大切だと思っています。連想をつくるのに、見せる顔つきがあちこちで違っていてはバラバラになるので。一方で、お客さまの層を広げることも必要です。今まではレコードコレクターや音楽マニアが中心でしたけど、それでは限界がある。これからは、まだレコードを知らない人や若い層にアプローチしていかないと。そのために流行りのアイドルのレコードを店で扱うかどうか・・・その辺りの線引きはブランディングに関わる今後の課題ですね。

池戸:理念策定から始まって、行動指針やブランドパーソナリティ、ロゴ、インナーブランディングなど、広く関わらせてもらいながら、進化するF T Fさんを目の当たりにしています。これからも前進を続けるF T Fという船の隣で、G I F Tがお手伝いできたらと思っています。

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